犬へのラブレター「TJヘ」



TJへ


愛する家族、TJへ


きみの飼主さんは
もともと、ぼくじゃなかった。
ぼくの友だちの犬だったんだよね。


その人が遠くへの引っ越しで
どうしてもきみを飼えなくなった。

きみへの愛情が深い人だったから、
悩んで、悲しんで、
教会で神様に祈ったりしてた。

その人がうちに
きみと連れて相談に来た。


するときみはすぐに、
うちにいた2匹の犬たちと
なかよく遊びはじめた。

「ぼくはぜんぜん大丈夫。
ここでたのしく暮らせるよ。」

きみはそう言ってたね。
だからぼくはうちで預かることにした。

あの人もけっしてきみを、
人まかせにしたかったわけじゃない。

かしこいきみは、
それもぜんぶ、
わかっていたね。


じゃあね、TJって、
きみの飼主さんが涙しながら、
帰るとき。

きみはずっと、
大好きな飼主さんの背中を
じっと、みつめていた。


声も出すことなく、
目、表情、体全体で、
別れを耐えていたね。


そして、
よくしつけられていたきみは、
けなげに遠慮しながら、
でもすっかりうちの家族にとけこんだ。

海で泳ぐぼくの背中に
乗りかってきたり、
たくさんの思い出をつくったね。


このまえ、ぼくの母が亡くなって、
ぼくが悲しみにくれていたとき、
きみはそれを察してくれていたね。
なぐさめてくれたね。


おかげでぼくも、
別れを耐えることができた。


ありがとう。TJ。


きみはつよかった。


きみからつよさを教えられたんだ。


これからもぼくたちは家族。
よろしく。


横浜ブリキの博物館 館長
北原照久