アンコさんへ
新しいことをはじめる
勇気をくれたアンコさんへ。
あなたと出会ったのは2年半前。
仕事でわたしが関わっていた犬屋さんに
あなたはいた。
まったく犬を飼おうとなんて
思っていなかったのに。
そんなつもりじゃなかったのに。
なんなんだろうね。
あなたを見たとき、犬として見えなかった。
わたしの仕事はとにかく
いろんな人と打ち合わせしたり、連絡をとったり、
とにかくずっと話している仕事。
携帯電話をかけっぱなし。鳴りっぱなし。
そのぶん、わたしは家に帰ったら、
何もしゃべらず、だまって、
お風呂に入って寝るだけの日々でした。
あなたが来てからです。
わたしが家ですごく話すようになったのは。
あなたはキョトンとして、何も言わず聞いてる。
話してる途中で、あなたはいつのまにか寝て、
いびきをかきはじめたりもするけどね。
あなたに出会う前から、わたし
なんだかずーっと忙しかった。
どうしたってむずかしい、人間関係。
自律神経失調症になったときもあったし、
もう、わたしの生きてる意味なんて、と、
悩み方をまちがいそうにもなったこともあった。
あなたと暮らしはじめて半年ほどたったとき、
一週間まとめて休みをとったでしょう。
どこかに旅行に行くわけでもなく
毎日のようにあなたと、近所の川の土手を散歩して過ごした。
あなたと一緒に、ゆったり流れる川や、空の雲を見た。
あなたが匂いをかぐ、川原の小さなたんぽぽを見た。
同じように犬を連れた人と、
初対面なのにいろんな立ち話をしたり。
そんな時間って、実は初めてだったのね。
走りながら落っことしてきたものが、
ずいぶんいっぱいあることに気付きました。
でね。もう一度わたし、
目の前をちゃんと見て歩きだそうと思ったんだよね。
あなたと土手を歩きながら、思ったんだよね。
やる気をくれたのはあなたです。
あなたとあのとき、会わなければ、
いまわたしは、こんなに一生懸命、生きれていない。
あなたはわたしにいろんなことを
メッセージしてくれるね。
ありがとう。
これからもよろしくです。
アンコさん、聞いてる?
あ、寝てる。
あしたもがんばろうっと。
生きている。これからもつづく。
長沢久美子