小梅へ
いつも玄関で迎えてくれる小梅へ。
あなたも7歳。
人の年齢にすると40代。
わたしとちょうど同い年くらい。
帝王切開のたいへんなお産も経験したね。
あなたも娘を生んで、お母さんになった。
ぜんぜん吠えたこともなかったのに、
あなたは母親になったとたん、
娘に近づく他の犬に吠えるようになったね。
あなたにだけお菓子をあげたとき、
ちゃんと娘を呼んで、
一緒に食べてたこともあった。
母性よね。
あなたが知り合いの家から
うちに来たときはよーく覚えてる。
うちのおねえちゃんが中2、妹が小6だった。
あんまり家族のなかがうまくいってなくて、
上の娘が、家出しちゃっていて。
そんなときにあなたが来ることになって。
おねえちゃんと連絡がとれたとき、
電話口で言ったのをおぼえてる。
「生まれたばっかりの子犬も来るよ。帰っておいで」って。
そうしたらあの娘が帰って来た。
みんなであなたを抱いたね。うれしかった。
あの家出娘がもう22歳。
やっと好きなこと、みつけたみたいね。
ネイリストになって頑張ってるね。
妹のほうもバイト先の居酒屋さんで
活躍してるみたい。
接客業をやっていきたいって言ってる。
二人ともどうなることかと心配したけど、
大人になってきた。
年に一回、あなたは持病の椎間板ヘルニアで、
下半身がまひして動かなくなってしまう。
また発症しそうな時期だから、
最近はハラハラしながら家に帰ります。
元気に歩いて玄関に出て来てくれるとホッとします。
最近、白髪もでてきたね。
おたがい、年とったね。
これからもあなたと、あなたの娘と、そのまんなかにわたし。
「小」の字になって眠る。
この平和な日々が、
つづくといいな。
中村悦美